「リボンの騎士ザ・ミュージカル」独り善がりレポ(その10)

第二幕。暗い牢獄、書面を持つ牢番ピエールがひとり。書面には大臣からの非情な命令が書かれている・・・

「王妃とサファイアを殺せ。」

そんな、とショックを受けるピエールにふと入ってきた同僚の牢番コリンが声を掛ける。「どうした?」と怪訝な様子、「いや、なんでもない・・・今日から新しい囚人が来る。」と話を逸らし先ほどの書面を隠すピエール。「昨日までは王族だった。だが今日からは囚人だ、そのように扱う!」と小気味良いピアノのリズムに合わせて牢番の歌。


♪食えない、食えないってこのうたもけっこうな中毒ソング。油断すると頭の中に流れ出しますが、やっぱり食事時が多い気もします。牢番はピエール(三好絵梨香)、コリン(岡田唯)のノーマルパターンと、ピエール(石川梨華)、トロワ(三好)、コリン(岡田)の美勇伝パターン、そしてピエール(辻希美)、トロワ(三好)、コリン(岡田)の希勇伝パターンがあります。パターンによって踊りや台詞回しも少しずつ変わっていくのですが、どれも面白いです。特に三好さんの演技には正直驚かされました。
元々ボーイッシュなイメージはあったんで、それだけでも牢番の資質ありかと思ってましたが、ほんとは熱い人情家牢番ピエールは意外なはまり役であったかも。おそらく一般に発売される「リボンの騎士」DVDはこの三好ピエールver.となると思いますので、観にいけなかったよチクショーなんて方々はちょいと注目して観て貰うといいかも。

そしてこの牢番の歌も棒(何棒?)を振り回したり、テーブルの上にあがったりと派手なアクションが多く、観ていてもすごく楽しいものとなってます。石川さんとかお尻振りすぎだろ!ってくらい(笑)岡田さんもかなりのオーバーアクションだけどね。三好さんはそこらへんわきまえてる(何が
気になる辻さんはやはり足が完治してないこともあって松葉杖を使ってのダンスとなるんですが、けっこううまいことやってるなと思いましたよ。パンフレットのリハーサル写真なんかを見ると、もし足が完治していたら石川さんと同じダンスになっていたのかな〜と思うんですが、違うver.が観れたというのはけっこうオイシイことだったのかなと。辻さんの松葉杖には髑髏が付いてたりしてけっこうオサレ(笑)いや、辻さんならやっぱりリボン付けたがるんでしょうけどね。今回のドクロは牢番ぽくてよかったですよ。というかそれも人に言われて気が付いたけどねorzそうそう、牢番が踊る時に牢獄の骸骨も踊ってるって知ってました?意外と知らない人もいるかな・・・と。「リボンの騎士トリビアでした(笑)



マジメに働いているだけでは食えない。おどしてみたり、すかしてみたり、色々な手を使って細かく稼いでそれで生きてきたけれど・・・と辛い牢番稼業の悲哀を歌う。なんだか同じく薄給の身としては身につまされるものがあります(涙)
このままでいいのか?!誰かの命令どおり生きて・・・でも命令どおり生きればなにも考えずにすむから楽だ。どうせこの世の中は牢番だけでは変わらない!って、なんか公務員ぽいよ牢番orzというか自分もこのままでいいのかしら、命令どおりに生きて、休みになったら娘。を追いかけて・・・あ、楽しいから良いか♪(マダオ



牢番がビシッと歌で決めて、拍手。パチパチパチ。「時間だ、囚人が来た。」と牢獄の扉が開くと二人の囚人が入ってくる。白のみすぼらしい服装・・・王妃とサファイアである。
「何か食べるものはないか?ここに来るまでなにも口に出来なかった。」とサファイア。「それは命令でしょうか?・・・人に何かを頼むにはお礼が必要です。」とコリン。例えばこの指輪とか・・・と王妃に手を伸ばすと、すかさずサファイアが止めに入る。「触るな、無礼な!」そんなサファイアをなだめ、指輪を渡す王妃。ほかには?とさらに金品を要求する牢番、しかし目ぼしい物はもう持ち合わせていない。「・・・ならば寝ろ!これくらいのお礼では食えない!」と食事も与えず立ち去る牢番。


「なんてやつらだ!」と冷たい牢番の扱いに憤るサファイア。私のせいで、と自分の非を詫びる王妃を尻目に自分たちを貶めた大臣たちへの憎しみを募らせる・・・私は大臣が憎い!大臣に従う人々が憎い!憎くて憎くてこの世の全てを憎んでしまいそうです!!
そんなサファイアの言葉を聞き、優しく呼びかける王妃。「サファイア・・・誰かを憎いと思ったらその憎しみを忘れなさい。」と諭す。そんなきれい事、悪を憎まなかったら誰がこの世を正すのです!どうやって悪者を罰するのです!と反論するサファイア。それに返す王妃「あなたは誰かから憎まれたことはないの?」・・・・・・その言葉におもわず口ごもってしまうサファイア。思い出すのは「私が憎いのはサファイア王子です!」というフランツ王子の言葉。気付き、うつむくサファイア。でもまだ納得がいかない。そんなサファイアに優しく話しかける王妃。「許しあい助け合い」。


人を憎むものに人は裁けません。だれかを憎いと思ったら、その憎しみを忘れなさい。許しあい助け合い生きてゆくのです。そんな王妃の言葉を次第に受け入れていくサファイア。この王妃の精神教育は素晴らしいの一言。もし会場で「許しの壷」とか売られてたら普通に買ってしまいますよ(笑)こうやってサファイアが暗黒面に堕ちそうなときに救い出し、軌道を修正するという手際のよさ。こんな優しいお母様でいいなぁ愛ちゃん。物語冒頭の宮殿の庭のシーンでもそうですが、こういう情操教育はいいですよね〜。自分も子供ができたら( ^▽^)ボエ〜♪と歌い聞かせてあげますよ(笑)石川さん御免。
そしてここでの王妃からの教えによりサファイアは精神的により一層強くたくましくなるのです。



歌い終わり、優しく抱き合う二人。そこにピエールの登場。気が付きサッと離れる二人に食事を差し出す。「何も食わせないんじゃなかったのか?」との問いにも無愛想に答えるピエール。二人が祈りを捧げ食事を食べようとすると、ピエールが口を開く。「待て!なぜここへ送られた。食う前に話せ。」

このこは昨日まで王でした、と理由を話す王妃。本当は女の子だったのです、私たちはみんなを騙していたのです・・・しかし、納得がいかないピエール。「他には?秘密を守るためにたくさん人を殺したんだろ!」そんなピエールの言葉に激昂するサファイア。それをなだめる王妃、そしてピエールに一言。「誰一人殺しませんでした。自分の為、人の命は奪いません。そんなことをしたら生きる資格がなくなってしまいます。信じていただけませんか?」
生きる資格・・・いや、だが・・・と自分が今しようとしていることと自分の信念の狭間で苦しむピエール。そんなピエールを尻目に「食べてもいいか?・・・食べるぞ。」と食事を口にしようとする二人。息を呑むピエール、スプーンが口に運ばれるそのとき、駆け寄り皿を弾き飛ばす。
「何をする!見せるだけ見せておいて食べさせないつもりか!」と憤るサファイアに大臣からの書面を付き出す。「これを見ろ。毒で殺せと大臣から命令が出てる。これを口にしたとたんお前たちは死ぬ!」衝撃的な事実に驚きで言葉も出ない二人。「逃げてくれ・・・ついてこい!」二人を連れ出そうとするピエール。「そんなことをしてあなたは大丈夫なのですか?」とピエールの身を案ずる王妃。
「お妃様・・・自分の為人は殺さないと言ったな。だが、誰かを・・・お前たちを殺さなければ俺が危ないだけじゃない、幼い妹や弟まで危なくなるとしたら!!・・・いや、俺の家族のことなんてどうでもいい、頼むから早く逃げてくれ!」


二人を連れ出そうとするピエール。しかし行く手には同僚コリンの姿。「ピエール!どういうことだ!」勝手に囚人を連れ出そうとするピエールに詰め寄るコリン。どういうことなんだ!と更に詰め寄るもピエールは理由を話してくれない。と、そのとき腰の刀を抜くピエール。「何の真似だ。」とピエールの異常とも思える行動に訝しげなコリン。「俺はこの人たちを殺したくない!正しいことは正しい、間違ってることは間違っている・・・誰の命令だろうとこの人たちは殺せない!!」
それが大臣から命令されたものだと知るコリン。しかし仲間である自分に、家族と同じ自分に刀を抜いたピエールが許せない。そして何より、その命がけの行動のわけを話してくれなかったことが許せなかった。「なら・・・なぜそういってくれない。命がけなんだろ?そんなお前を俺が助けないと思うか?」そんなコリンの言葉にハッと気付かされるピエール。刀をさげ、すまなかったと頭をさげる。とっさにピエールの刀を取り上げるコリン。「だめだ、許せない。お前は俺を疑ったんだ。二人がかわいそうになって食い物をもってきたらこの騒ぎだ。」と、コリンの手の包みに目をやるピエール。「・・・俺に隠れてこっそりと、か?」仲間であり家族であり、共に信じあってきたピエールとコリン。どんなときも相手の為を思う、その心はまさに一心同体。そんなお互いの思いを確認し、思わず笑う二人。「俺たちは仲間だ!隠しごとは無しだ!・・・よし急ごう!」
サファイアたちに包みを渡す。そして自らの刀も。コリンが指輪を返そうとするが制止するピエール。指輪は二人を殺した証拠にするのだ。代わりに愛用のネックレス(母の形見)を渡し、二人を送り出す。「いいか、理想を並べたって生きていけないんだぞ!」そんなピエールの言葉に返す王妃、「ではあなたがたはどうして私たちを逃がしてくださるのですか?」


王妃の言葉に答えず、歌で送ろう、と二人。「よき日を願って」。ピエールとコリンに深々と一礼し、歌を背に牢獄を後にする王妃とサファイア。「元気でなぁ!」、二人の行く道を照らすように、懐かしいふるさとを懐かしい日々を優しく歌い上げるこのシーン。・・・ちょー泣ける。というか思い出してウルウルきちゃうわ。なんか実際に観ている時よりも思い出しながらこれ書いているときのほうがキテるってどうなのよ(涙)ほんとここのシーンは熱い。激アツ。地球は冷ましてもここは冷まさないでくd(ひつこい)
まぁなんといっても牢番ズの友情が堪らんのよね。命令通りに生きていれば楽だなんて自分に言い聞かせながらも、自分たちの信念は曲げたくない。そしてそれが仲間たちのためならなおさら・・・ってアツーーーーイッ!(笑)アニキ、あついよアニキ。これ、牢番だけのアナザーストーリーとかやってくれないかなぁ。というか牢番だけじゃなく、大臣たちも、淑女たちも、これから出てくる3騎士もそうだけど、もっともっとそれぞれの物語を観たい知りたいって思わせてくれるのは「リボンの騎士」のすごいところだよなぁ。はまりすぎ?いやいや。公演終わって2週間、今でもそこかしこのブログなどで盛んに言及されてるくらいですからね♪(d:keyword:リボンの騎士参照)それだけ面白かったということですよ。


このエントリーの頭の方にも書いたけど、牢番は色んなパターンがあって面白い。三好さん、石川さん、辻さんとみんな個性があって面白い。自分的に好きなのは辻さんver.かな。セリフも歌もとても力強くてかっこいいんです。さすが女優!って本人に言うと照れそうだけどね。しかもすっごく嬉しそうに(笑)そしてコリン役の岡田さんも実は良い。台詞回しがやたらと舌を巻き気味なんだけど、それがなんか牢番という役どころのアウトローな部分を際立たせてくれてます。特に王妃たちを冷たくあしらうところなんかゾクッとしちゃいますよ。逆に三好さんは良い人ぽいイメージが強すぎて、自分の中では悪役に変換しきれてませんでした。その点、だれかに命令されてるんだろうな感はリアルに感じられましたけど・・・ってこれは美勇伝の三好さんも一緒だな(笑)三好さん・・・石川さんに付いていって大丈夫ですか!それがあなたの正しい道ですか!?*1




牢番ズの熱演に心も温まったあとは・・・いよいよ本ミュージカル一番のクライマックス(違)思い出しただけで震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!ヌーーヴォーさまぁぁ(一刀両断

*1:川;^ ロ ^)<余計なお世話です